「働かないおじさん」と呼ばれて

少し前だけど、ネットで気になるワードとして「働かないおじさん」というのがあった。社内で何の仕事をしているのかわからない。いつも暇そうにしている。

それなのに怒られもせず、クビにならない。

それどころか、どうやら社歴が長かったり、年齢が高いため、給料が良いらしいという。

そのため、若手からの不満はたまるばかり、ついた名称が「働かないおじさん」というわけだ。

つい最近まで、大手ディスカウントショップの流通チラシ制作業務という、若者から見たら大変にレガシーな業務に従事していた私も、おそらく若手からみたら「働かないおじさん」とみなされていただろう。

連日連夜の深夜残業、当たり前のように発生する休日出勤を低賃金でこなしていた身としては甚だ不本意な評価だが…。

そもそも当時、私は広告代理店の平均年齢高めの流通チラシ制作チームに所属していて、中途で入社したこともあって40代なのに年齢的にも社歴的にもチーム内では若手であった。

そして50代の先輩社員にたいして「働かないおじさん」あるいは「自称仕事ができる人」だというふうに不満を持っていた。

実際、50代の年配社員と、たびたび衝突することもあり、自分としては年配者に意見を言いづらい若手社員になりかわり、若手社員の意見を代弁しているつもりでいた。

そんなある時、同じチームの若手女子社員が立ち話しているのが耳に入ってきた。

「うちのチームの〇〇さんとか、××さん(私の名前)とか、おっさん同士なんだから、いい加減、仲良くしてほしいよね〜。こっちが気を使うっつうの!キャハハ!」

「そうそう、ケンカしている隙があったら少しは働いてください、働かないおじさんのみなさま?キャハハ!」

衝撃であった。

なんのことはない、若手の一員として年長者に物申しているつもりであったが、若手から見れば、ただの働かないおじさんの一員だったということだ。しかも軽蔑してやまなかった働かないおじさんの一人としてカウントされていたという…。

この件をキッカケに私は若手の代表者ヅラして、おじさん達に物申すことをやめた。

自分がおじさんであることも、若手から働かないおじさんとみなされることも受けいれたのだ。

この件の後、すっかり意気消沈した私は、おじさんの一員として粛々と業務をこなす日々を送った。

そして、おじさんの一員として、仕事をこなしているうちに、おじさんへの見方が変わっていった。単純に言えば、「働かないおじさん」は実は働いていたことに気づいたのだ。

成果をアピールしたいばかりにともすればパフォーマティブになりがちな若手の仕事振りに比べて、非常に目立たなく地味なものであったが、会社全体にとってなくてはならない業務を、おじさんは粛々とこなしていたのだ。

私は今までの不明を恥じ、おじさんを見直すのと一方でパフォーマンスばかり一丁前(私の主観では)の若手に対する怒りを覚えていたのだった。

この話は結局のところ何が言いたいのだろう。自分が若手のつもりの時は、「働かないおじさん」に怒りを覚えて、自分がおじさんだと認識すると今度はおじさんに怒りを覚える。単にポジションに応じて自己弁護しているだけとも言えるし、実際そうなのだろう。

確実に言えることは、今後、自分が働かないおじさんを糾弾する側にまわることはないし、おじさんに攻撃的な若手の人に大しては、あなたもいずれ歳をとるのだから、少し落ち着きなよと思っているという事だ。

※本記事は2022年に記載した記事を再アップしたモノです。

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