自称「仕事ができる人」

転職経験が多いので、今まで複数の会社に勤務経験があるのだが、経験上、どこの会社にも存在するタイプとして、自称「仕事ができる人」というのがいる。

自分のことを「仕事ができる人」と認識しており、周りにも「いかに自分が仕事ができるか」ということをアピールすることに余念がない。だが所詮、自称「仕事ができる人」なので、周囲からも会社からも評価されていない。その周囲からの評価の低さは客観的には妥当なのだが、本人的には自分は「仕事ができる人」なので、当然、その評価の低さに納得していない。「仕事ができる人」である自分を評価しない周囲や会社を「何もわかっていない仕事ができない人」もしくは「仕事ができる自分に嫉妬している人」とみなしている。

基本的に周囲に対して上から目線であり、いかに社内でマウンティングをとるかを、何よりも重要視している。

何故、自分以外に自分を評価している人間が皆無なのに、自分自身を評価し続けることができるのか?実は自分自身が「仕事ができる人」ではないことに気がついているにも関わらず、虚勢をはっているのか?

私の観測範囲の話ではあるが、多くの場合、自称「仕事ができる人」は自分一人しかやらない仕事を専属のような形で抱えてしまっている場合が多い。そして自称「仕事ができる人」はその仕事内容を周囲に共有しない。

結果、その仕事をできるのは、自称「仕事ができる人」だけという状況になる。この状況は「会社の仕事を周囲に共有しない。」という組織人として、あるまじき行動の結果なのだが、自称「仕事ができる人」は、その状況を自分に都合よく解釈してしまう。つまり、自称「仕事ができる人」にとって、自分にしかできない仕事があるというのは、自分がそれだけ仕事ができるということの証明なのだ。

何という現実歪曲能力だろうか。

この手の自称「仕事ができる人」は何かというと次のようなセリフを言いはじめる。

「いやー、手伝ってほしいのは山々なんだけど、この仕事、俺にしかできないからなー。振りようがないわー。」

「この俺がやっている難しい仕事は俺がなんとかするからさ。そっちの簡単な仕事はみんなで何とかしといてくれる?誰でもできるでしょ?」

「いやー俺が会社からいなくなったら、やばいなー。この仕事。」

なんという言い草かと思ってしまうが、こういうタイプの人は残念ながら結構多い。自分の仕事は周囲に共有せずにブラックボックス化する一方で、周囲の仕事には上から目線で口をだす。関わりあいになると、精神的に消耗する一方なので、関わらないのが一番なのだが、会社組織に属していると、そうもいかない場合が多々ある。

では、こういった自称「仕事ができる人」には、どう対応するのが良いのか?

ひとつは自称「仕事ができる人」をとりあえず、褒めまくるという作戦だ。目的としては、とりあえず自尊心を満たさせておいて、自分以外の他の仕事に口出ししないようにしてもらうということだ。仕事の協力はしてもらえないまでも、仕事の邪魔になるのは、防げるかもしれない。

だが、この作戦も結局のところ、一時的には効果を発揮するかもしれないが、根本的な解決には至らない。

もう一つの方法は、会社や上司に相談して、自称「仕事ができる人」がガメている仕事を取り上げてもらうことだ。実際、このタイプの自称「仕事ができる人」の末路は、このパターンが多いように思える。それまで自称「仕事ができる人」が占有していた仕事を他者が引継ぎ、自称「仕事ができる人」が、それまで「誰にでもできる簡単な仕事」と呼んでいた他者の仕事を行うことにより、自称「仕事ができる人」の本当の実力が白日の元に晒されるのだ。その結果は往々にして悲惨である。社内で特別な存在として築きあげてきた「仕事ができる人」という虚構が崩れ去るのだから。虚構が崩れ去ったあと、何もない等身大の自分として、一から出直しだと奮起する人は多くない。元々プライドだけは高く、特別ではなくなった普通の存在(むしろ、それ以下)としての自分に耐えられないので、周囲の無理解に対する悪態と共に、その職場を去っていくことが多い。そして自称「仕事ができる人」が去った後、本人が言っていたように会社の業務に支障がでるかといえば、全く、そんなことはなく、むしろ円滑に仕事がまわるようになるというのが、実に喜劇的であり、また悲劇的である。

と…まあ自称「仕事ができるできる人」をディスってきたわけだが、ここから学ぶべきなのは、反面教師として、自分はこうならないようにしようということだ。そして私のように中年になってくると、油断するとすぐに自称「仕事ができる人」になってしまう危険性を自分自身に感じる。

この記事を読んでくれた方も、くれぐれも自分自身が自称「仕事ができる人」になっていないか振り返って気をつけてほしい。

私も気をつけようと思う。本当に。

*本記事は2020年に記載した記事の再アップとなります。

コメント